【 やっぱり面白い:向田邦子 】

私の日課になりつつある「読書」
図書館で読みたい本を借り、まさに「乱読」三昧。
図書館の良い点は

  1. 気楽なのです  借りてつまらかったら、返せば良い、「その気楽さ」。
  2. 場所をとらない 読み終わったら「返す」、そう「ノースペース」。
  3. 無料(ただ)  出費がないので~す。年金生活者には大助かり。

てな具合で、今回借りてきたのが「向田邦子全集①」、「向田邦子全集②」、他。
向田邦子」さんは、勿論有名ですし興味はあったが、当時は「本」を買って
まで読まなかった。
今回は「乱読の一環」にいれ借り入れ、読み始めた。
いや、凄いです。独特な感性にはまってしまいました。

本の最初に「書評」があった。まず、その抜粋から・・・・・・。

「著者」爆笑問題太田光
「タイトル」男が読む向田邦子

向田さんの作品は、不道徳であると思う。この短編集の作品はどれも、
“一番書いてはいけないこと”だと感じる。では、他の人々は、書いては
いけないからことだから、こういう作品を書かないのかというとそうではない。
誰もが知っているはずなのに、誰も言葉に出来ないから、“書けない”のだ。
私はテレビで発言していて、視聴者からクレームは日常的にある。
「教育上よくない」「不謹慎である」と。しかし向田邦子のこの作品達と
比べたら、私の言葉のなんと他愛のないことか、罪のないことか、と思う。
私の言葉は、小さい子供の無邪気なひやかしで、向田さんの言葉は、
大人の本当の悪だ。にもかかわらず、向田さんの作品は有害とされるどころか、
逆に尊敬され続け、美しく、品があり、礼をわきまえた、正しい姿、といった
イメージすらある。私はこれが、向田邦子の“恐ろしさ”だと思う。
大して罪もない戯言しか言えないのに、「言論の自由」などと倫理に楯ついて
大騒ぎすること、なんと幼稚なことか。向田さんは少しも騒がず、やすやすと、
ど真ん中で、誰も触れてはいけないはずの、悪くて魅力的なことを堂々と
かいてしまう。震えるほど恐ろしいが、惚れ惚れするほど、格好良い。
そこに描かれているのは、堕落であり、不倫であり、殺意であり、暴力である。
どれもが、罪とされ、悪とされるものだ。その悪を内に持った登場人物達を
これほど赤裸々に、魅力的に描いてしまうことが、良しとされるのは何故だろう。

 ・・・・・・・・・・・・続く。

では、本書の一遍「だらだら坂」から、私が、なるほどと感心た部分を
抜粋してみた。
ートミ子が、整形手術をした目に黒眼鏡をかけぬっと現れ、愛人の庄治を
のけぞろせたシーンー

「どうして、俺に黙ってそういう真似をしたんだ」
庄治は、トミ子を小突いていた。
そのはずみか、置時計のうしろにでも置いてあったのか、ピンポン玉が棚からふわりと泳ぎだしてきた。
ピンポン玉は畳の上で二つ三つ小さく弾んでから、ゆっくりと部屋の隅に転がってとまった。
俺はその目が好きだったんだ。おふくろの手に出来ていたあかぎれみたいな目。
笑うとあかぎれが口を開いたようになる目。泣くと、ドブから水が溢れるように、
形のはっきりしない涙が、ジワジワビジョビジョとにじむ目がよかったんだ。
トミ子は黒い眼鏡をかけて座っていた。黒い眼鏡はあかぎれの目よりも、もっと何を
考えているか解らなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く。

確かに、同じ女性が、「表現の為」とはいえ、ここまでリアルに書いて・・・・・・とは思うが。
でも、なんか凄いよね、ドキッとするスリルを感じる。流石です。
それと書こう、表現しよとする「目線」と「視点」が普通じゃない。
ただ、全体に向田さんならではの「ユーモラスな情感」がいつも漂っている。
そのへんが人を惹きつけているのだろう。
続きを読みます。
全集がとんでもないボリュウムであり、どこまでいけるかな?